感想「華麗なる一族」

神戸のとある財閥一家の栄枯盛衰を描いた小説。

 

▼あらすじ

家父長である万俵大介は、財閥を拡大するために我が子に閨閥結婚を強い、一方自分は家の中で不倫女と妻との同衾生活。やりたい放題。

長男の鉄平は鉄鋼会社の専務を務め、仕事に志高く、家庭にも誠実。これがドラマではキムタクが演じる役だ。優秀な後継者に傍目には映るが、大介は鉄平に特別な感情を持つ。それは祖父と妻の子ではないかという猜疑心だ。純粋に息子として愛せない。

大介は、鉄平の会社を貶めることで自身の銀行が拡大する悪策を閃き実行に至る。老獪なだけに見事に狙い通り。鉄平はどん底に落とされ、挙げ句の果て自殺してしまう。

銀行は大きくなり全てを手に入れたようにも見える大介だったが、鉄平を亡くし、その他の息子娘嫁は家を出、長きに渡り事実上の伴侶だった妾とも縁を切ることに。豪邸でぽつりと食事をするラストシーンが、物語の冒頭、家族皆で幸せに食事をしていたシーンと生々しく対比させながら物語を終える。

 

▼感想

ただただ登場人物全員が不憫でならない(特にキムタクはやばい)。悪人として描かれる大介も、財閥を拡大する呪い、鉄平が自分の子ではなく、祖父と妻の子ではないかと猜疑する呪いがかけられたある種の被害者だと言える。

めちゃめちゃバッドエンド。悪がのさばり、善が挫かれる。世の中って実はそんなもんだと残酷に突きつけられる。

物語の終わり方はゴッドファーザー2っぽい。