感想「海と毒薬」

第二次世界大戦の時代、とある大病院で違法な人体実験に強制的に駆り出された医者の話。外形的に見れば反人道的な医療を施したまじきちな事件だが、裏には院内政治などの大きな波(海)に巻き込まれた当事者の葛藤が生々しく描かれている。そして何より、人体実験で得られた結果によって、現代の我々が今日まで生きながら得ているのかもしれないという、なんとも救いのない読後感。